現状の最適化 or 自己表現?
突然ですが、私たちは何のために生きているのでしょうか?
「幸せになるために生まれてきた」とか
「生きている意味なんて本質的にはない」
など様々な考えがあると思います。
何が正しいかということを考えることは一旦置いておいて、私たちそれぞれが何を望んで、それをどのようにデザインするかを探求することは生きる上での一つの楽しみであると私には思えています。
一方で、「自分らしさ」や「自己実現」という言葉への抵抗感が出てしまうことが多いのではないかと思ってもいます。なぜならば、多くに人たちにとって、それは叶わないものと見えているからではないでしょうか。
この記事では、『自己表現や自己実現を阻むもの』と『突破するための基本的な考え方』の2点について探求してみたいと思います。
自分の生き方や立ち位置、振る舞い、キャリアなどについて、ジレンマや葛藤を抱えている方の考え方の一助になれば嬉しいです。
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人間は豊かに生きるためにプログラムされていない
哺乳類としての私たちは、「人生を豊かに生きる」ために、そもそもプログラムされていません。
急に「えっ!」となるかもしれませんが笑、
動物としての私たちの最優先事項は「死なないこと」です。
つまり、外敵から身を守り、その環境で生き延びることです。マンモスがいる時代に生きていた人類を考えてみるとわかりやすいかもしれません。
その時代は、自分たちよりも強い大型動物が自然界にたくさんいたはずです。
彼らから身を守ることができなければ死んでしまいます。物理的、身体的に命を守ることが重要であったことは理解しやすいです。
「死なないこと」が十分に満たされると初めて「成長すること、発達すること」にエネルギーを向けられる余裕が生まれます。ここでいう成長や発達とは、当時でいえば動物から逃げたり、狩りすることに必要な体力や技術、知識のことです。現代でいえば、身体機能の向上や学習による思考パフォーマンスの向上といえるでしょう。
ここでのポイントは、人間の行動原理として、最優先されるのは「生き延びること」。そして、次に「成長、発達すること」の順番であるということです。これは昔も今も変わりません。
つまり、生き延びることを差し置いて、成長や発達にエネルギーを向けようとしても、それは達成されないということです。
これを現代に置き換えてみましょう。少なくとも日本で生活をしている以上は、命の危険にさらされることはほとんどありません(もちろん可能性はゼロではありませんが)。古代の人類が経験していたマンモスに襲われる脅威に比べれば、ほとんどないといってもいいと思います。
そうであるならば、第一優先は簡単にクリアしているので、成長と発達に十分にエネルギーを向けられると思いますよね。
しかし、多くの場合、そこに挫折感を感じる人は多いと思います。最低限の食事も摂れて、病院も近くにあって身体的な脅威はなくなったはずなのに、、、、、、、
不思議ですよね。
行動原理の4つの領域
それを理解するために、「死なないこと」と「成長と発達すること」をそれぞれ「対自分」と「対外界」という軸で分けてみます。そうすると以下の4つの領域で表すことができます。
人間の脳と身体の機能を前提とすると以下の1~4の順番で満たされていくと考えられます。マズローの5段階欲求と同様の構造です。
1. 身体機能を維持する
「死なないこと」✖️「対自分」
睡眠、食事、快感、心拍、呼吸、体温調節など
2. 危険を回避する
「死なないこと」✖️「対外界」
身体的な危険(=マンモスから逃げる)に加えて、精神的なストレス、ジレンマや葛藤という脅威の回避
*身体的な脅威はほとんど取り除かれた現代でも、精神的な脅威が増大していることで、脅威やストレスを感じていることは変わらない。つまり、古代人のマンモスが現代人の社会的なストレスにすり替わったということ。
3. 能力脳向上
「成長と発達」✖️「対外界」
訓練による身体能力の向上や学習による思考、知的パフォーマンスの向上
4. 自己実現と自己表現
「成長と発達」✖️「対自分」
興味、関心、好奇心に従って、本来の自分が本当に満たしたい体験や志の実現
現状の最適化 VS 自己表現
図解を眺めてみると、人間の行動原理の順番は以下のようになります。
1. 【身体機能維持する】
↓
2. 【危険を回避する】
↓
3. 【能力の向上】
↓
4. 【自己実現】
多くの場合は、2. 3. で大きな挫折を感じることが多く、図解の左側部分に私たちは普段からより多くのエネルギーを傾けていることがわかります。そうして、いつまで経っても自分が求めている自己表現にたどり着けない感覚に陥ります。
次に、図解を縦に分けてみると、私たちはいつも外界という周囲の環境に対処することに奔走していることがわかります。マンモスという身体的な脅威は過ぎ去ったはずなのに、その代わりに今度は家族や社会から求められる期待やあるべき姿というものが新たな脅威として立ちはだかっています。それらの要求に応えられないことへの不安や怖れを行動の原動力にして、成果や結果を出すための能力を高めることにエネルギーを注ぎます。
十分に能力を高めたら、ようやく私の自己表現ができるんだと意気込みますが、やれどやれどその現実はなかなかやってきません。そうして、何のために能力を高めたいのかわからなくなってきて、私が本当にやりたかったことはこんなことではなかったという体験をするわけです。
このように考えてみると、私たちが生まれて人生前半戦でやっていることは、与えられた環境で一番自分が生き残りやすい方法を無自覚に選び、この社会に適合することです。これこそが、自己表現や自己実現を大きく阻む、私たちに無意識のうちに組み込まれたシステムです。
そして、これは誰もが避けられない過程です。しかし、その過程の延長で成果や結果を求められ、能力を高めることを強いられた先に、本当に自分が望む自己表現があるのか?私は疑問を感じています。少なくとも、私はそれを成し遂げることができませんでした。
どれほど能力や技術を高めたとしても、その動機や原動力が心理的な不安や心配、怖れを払拭することにある場合、それは現状の最適化に過ぎないのかもしれません。それが一概に悪いとは思いませんが、多くの場合、本人にとって望まれない現実が繰り返されるケースを私は数多く目の当たりにしてきました。そして、私自身もそのような経験にジレンマや葛藤を抱いていました。本来の願望や期待、そして自身の可能性を探求する生き方は、次第に遠のいていきました。
パラダイムシフトへの挑戦
環境に適合する生き方が悪いということは決してないと思います。それを自覚的に選ぶ人がいてもいいことだと思います。より重要だと思うのは、本人が自覚的に選択肢し、決定するというプロセスにあると考えています。選ばされたのではなく、自ら選んだという感覚があれば、どんな選択にも責任を持って最善を尽くそうという気持ちになるのではないでしょうか。
その上で、自分らしい自己表現を望むのであれば、私たち自身を根底からアップデートするようなパラダイムシフトが必要だと考えています。簡単に言えば、「人格のアップデート」です。
それは、「環境に適合して死なないようにする受動的な生き方」から「自ら自覚的に生き方をデザインする主体的な生き方」へのシフトということができます。言い換えれば、「不安や怖れから逃れることを原動力にした行動」から、「興味や関心、好奇心を原動力にした選択と行動」へ変えていくということでもあります。
人格というOSをアップデートして、古いシステムを手放して、新しいシステムへの乗り換えです。
これまでの古いシステムを手放すためには、まずそのシステムを理解することが必要です。それは、すなわち「現在の自分がどのような人間であるか」を理解することでもあります。自分が何を感じ、何を考え、どのような行動を取りやすいのか、といった自分自身の認知や行動の癖と傾向を理解するということです。そうして、「自分という習慣」を認識し、手放していくということだと私は思っています。
同時に、自分の興味、関心、好奇心、好きなこと、得意なことを探求することで、「まだ見ぬ本来の自分」を創り上げていくこと。そのプロセスに最善を尽くすことが、その人独自の、他の何にも代えがたい豊かなジャーニーになると私は信じています。
おわりに
最後まで読んでくださってありがとうございます。ここまで『自己表現や自己実現を阻むもの』と『突破するための基本的な考え方』について、その背後にある人間としての構造と自己表現や自己実現を探求する際に必要なパラダイムシフトについての基本的な考え方を解説させていただきました。何か新たな気づきやきっかけにつながれば幸いです。
今回の記事では、具体的な探求方法などについては触れていませんが、さらに詳しい内容を知りたい方は、『自己表現のための教科書』を無料配布しておりますのでチェックしてみてください✨
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参考図書
ロバート・キーガン (著), リサ・ラスコウ・レイヒー (著) - なぜ人と組織は変われないのか ― ハーバード流 自己変革の理論と実践
由佐美加子 (著), 天外伺朗 (著) - ザ・メンタルモデル 痛みの分離から統合へ向かう人の進化のテクノロジー